つむちゃんが死んだ。

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小学生の頃のつむちゃんは、少しハスキーな声が印象的な少年だった。小柄ですばしっこくてドッジボールが得意で、兄の友達のひとりだった。 時々、他の同級生たちと我が家に遊びに来ていた。 テレビゲームに群がりはしゃぐ兄たちを、わたしは少し離れたところから眺めていた。 中学校に上がり、非行の道に走った兄の部屋には、テレビゲームに夢中な少年たちの代わりに、髪の色がまだらだったり、耳にいくつも穴が開いていたりする、煙草くさい青年たちがたむろするようになっていた。 そこに、真面目な陸上部に所属していたつむちゃんの姿はなかった。だから、中学生時代の彼のことはほとんど知らない。 つむちゃんと再会したのは、わたしが高校二年生の時だった。 気になる社員さんがいると、居酒屋でバイトを始めたレナが騒いでいて、その気になる社員さんというのがつむちゃんだった。 つむちゃんは地元の高校を出たあと、居酒屋の店員として働いていた。 ほどなくして、つむちゃんとレナは付き合い始めた。 その頃、わたしとレナは毎日のように一緒にいたから、わたしがつむちゃんと顔を合わせる機会も自然と多くなった。
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