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ドアベルの音が鈍く響いた。
思わず見上げると、ご丁寧に布が巻き付けてある。
店の中は薄い黄色の電灯に薄ぼんやりと照らし出されていた。ちょっと品のいいレストランなどで使われていそうな色の光だ。
路地にる雑居ビルの一階とは言え、店内は驚くほど狭かった。
人間が五人も入れば、動くのに相当苦労するだろう。
その上、いくつかの棚が壁に沿って並べられ、そこには小瓶や置物、アクセサリーなどがいくつも並べられている。中には積み重ねられているようなものもあり、それが更に店の中を狭く感じさせていた。
何に使うのかもよく分からないような枝や、骨のようなもの、磨いた石まであって、売り物なのかディスプレイ用の飾りなのかも判断が難しい。
極めつけに、窓は一つも無かった。
これって、店としてオッケーなのかしら、という疑問が浮かんだのも一瞬の事だった。
漂っている香の匂いの力もあってか、店の中全体に漂う神秘的な雰囲気の前に、そんな事はどうでも良いように思われた。それより、この店はタダものじゃない。きっと力になってくれるはず。そんな考えが瑞希の中に芽生えていた。
「いらっしゃい」
低く良く通る声が静かに瑞希を出迎えた。
立っていたのは、黒いぞろりとしたドレスに身を包んだ女性だった。
うねりのある髪は黒いが、その肌はチョコレート色。瞳も緑色をしている。
唇に塗られた真っ赤な口紅が怪しさを醸し出していた。
年齢は良く分からなかったが、怪し気な魔女のお婆さんという感じではなかった。外見的には、瑞希と同い年か年上に見える。その足元には一匹の黒猫がいて、じっと瑞樹を見つめていた。
「あなたが……」
自分で今から言う事が自分でも信じられない。
そう言う空気を含んだ沈黙を置き、改めて瑞希は口を開いた。
「本物の魔女?」
「いかにも。初めましてマジョリカ……と呼ばれているわ」
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