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相変わらず目の前の自称本物の魔女は、余裕の笑みを湛えている。瑞希の目に、それが自信に満ち振れた態度のように見えた。
「それでどうする?」
「……買うわ」
瑞希は鞄の中から現金で二十万を引っ張り出し、里香の方へ差し出した。
「ありがとう。それじゃあこれね」
ガラスの小瓶を受け取った瑞希は、それを鞄に入れていたハンカチにくるみ、慎重にしまい込んだ。
「それにしても、一服盛る度胸があるなら、話しかけるぐらい容易い物だと思うけれど……」
里香の言葉に、瑞希は首を左右に振った。
「あの子の姿を見ただけで、心臓が痛くなるぐらい鼓動が早くなるの。告白なんてとても……」
「シャイだものね……」
「ピュアなもので……」
「ピュアってシャイの上位互換なのかしら……まあ、私はお金を貰えればいいけどね。とりあえず、使い方のレクチャーしときましょうか」
そう言って、里香は瑞希にいくつかの注意点を話して聞かせた。
真剣な顔でそれをメモに取り、読み上げて確認もした。
「それじゃ、頑張ってね」
「ありがとう」
これで恋が上手くいけば、二十万何て安いものだわ。万が一インチキなら、お金を取り返せばいいだけの事。その辺りに関しては、抜かりなくやるつもりだった。
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