ねぇ、君は覚えてる?

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高校生活最後の夏の終わり、友達が通う他校の文化祭に遊びに来た私は各クラスの出し物を見て回った。メイド喫茶にお芝居、生徒達は皆結構本気でやっていて、凄く楽しめた。 「うちの学校のお化け屋敷、面白いって有名だよ!チケットあるから行ってきな!」 休憩中の友達から手渡されたチケット。その教室がある上の階に行き、列に並んだ。前にも後ろにもカップルばかりで若干気が引けるが、せっかくもらったチケットを無駄にしたくはない。 「次の方~!」 その声を聞いた私がチケットを受け付けの女の子に渡し、開かれた黒いカーテンの中に入っていった。 部屋の中は真っ暗で、ところどころに布に当てて明かりを抑えている懐中電灯が見える。どうやらそれを目印に進んで行くらしい。 急に出てくるお化け役の生徒の迫真の演技で、それなりに恐怖を感じる。良く出来てるなぁ……と関心をしながらコースを進んでいたその時、誰かが私の耳元でこう囁いた。 「ずっと、会いたかった。」 奇妙なセリフを思い付くもんだな……と思いながらも私は聞こえないフリをして出口に辿り着いた。一度後ろを振り返ると、どのお化けも元居た場所に戻っていて教室はまた静まり返っていた。 出口にいる生徒に感想を聞かれ、「とても面白かったです。」と簡単な感想を伝えた私はそのままその階の他の教室の出し物を見に行くことした。 最後に行ったクラスで開かれていたのは、社交ダンス。いやぁこれは無いわ……とUターンをした私の手を、一人の男子生徒が掴んでそのクラスの方へと歩き出した。その人が着ている制服からして、どうやらこの高校の生徒らしい……何かのイタズラかな?そう思うと何だか腹が立ってきた。 「ちょっと、放してよ!」 だがその男子は聞く耳を持たず、私の手を引いたまま教室の中へ入ってしまった。 「いやぁぁあ嫌だよ!私踊れない!!」 それでも彼はグイグイと私を教室の真ん中へと連れて行く。そしてやっとその顔をこちらに向け、優しく微笑んだ。その顔には、見覚えがある。 「さっちゃん、久しぶりだね。」 「直人…………君?」 すっかり背が伸びて男の子らしくなった幼馴染の直人君。いつも泣いてばかりいたあの頃の面影はもうほとんど無い。 そんな彼が、周りを気にせずいきなり私を抱きしめた。 「……………?」 「ちゃんと伝えられなくごめんね、俺も辛かったし、さっちゃんを悲しませたくなかった………忘れたことなんて無いよ、俺はあれからもずっとさっちゃんを想ってた。さっき喫茶店に居たでしょ?あの時に気付いたんだ、間違いなくさっちゃんだって。佐々木さんと話してるの見て、代わりにチケット渡してもらったんだ。」 「え………あ、そうだったんだ!」 「さっちゃん………」 事情を話した後、直人君が急に床に膝立ちをした。「え………?」と困惑する私の手を両手で掴み、真っ直ぐに私を見た。 【プロポーズっぽい絵】 「さっちゃん、俺と付き合ってください。もう、二度と離れたりしないから。あの時の約束………今度は守らせて。」
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