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いちゃこらもゆううつ
めるるの主な仕事は、水のトラブルに困ったひとからの電話の受付対応と対応時の報告書、および修理後の明細書の作成業務である。現場社員の報告書に従って、明細書を作成する。
忙しいときはものすごく忙しいし、暇なときにはものすごく暇である。
いま、めるるは暇である。コピー仕損じた紙をメモ用紙にするために、四等分にはさみで切っている。
社会人たるもの、暇なときも仕事してます風な感じを出していないとだめなのだ。会社員を六年もやっていると、それなりに暇のつぶし方を覚えるものである。
紙をはさみで切りながら、同僚の咲菜ちゃんが小出主任に怒られているのを盗み見ている。
怒られているというか、もうじゃれあっているに近い。小出主任は、咲菜ちゃんのような天然ボケのうっかり女子が大好物なのだ。
「水道の蛇口取り替え、トイレの上物取り替えの二件で一億七千八百五十万円ってどういう計算なんだよ。おかしいなあとか思わないの? 間違え方がぶっ飛びすぎてて、なんて言っていいかわからないよ」
小出主任は笑っている。咲菜ちゃんもつられて笑っている。
「すみません。なんか変だなあとは思ったんですけど」
「変だなと思ったら、見直さなくちゃだめじゃない。そのまま持ってきちゃったの?」
「はい。なんとなく」
小出主任に特別な感情はないが、目の前でいちゃこらされるとしゃくである。
めるるは基本的にミスをしない。計算間違いも誤字脱字も、指摘されたことがない。だから小出主任といちゃこらすることもない。
めるるはまたチョコボールの箱を出して、何粒かかみしめた。
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