突然の手紙にゆううつ

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突然の手紙にゆううつ

 私服に着替えて家路に着く。  会社から家まで三駅だ。  歩いて帰ろう。  蒸し暑くて人気が少なく、ただ街灯ばかりが白々しく光る夜道を歩く。  月が出ていた。満月だった。  とても低い位置にある満月は、月とは思えないほどに大きく見える。  今夜はなんだかおかしな夜だ、とめるるは思った。  大きすぎる月のせいなのか、肌にへばりつくような湿気のせいなのか。呼吸がうまくできない気がする。   生ぬるい空気は、吸っても吸っても満たされない気持ちになる。  嫌な予感が、めるるの胸のなかにあった。  家に帰ると、手紙が来ていた。  差出人の名前を見て、めるるはこころが凍り付いた。半年前まで付き合っていた元恋人からの手紙だった。  そう、「あのひと」からの。    取るものもとりあえず、めるるは部屋に入ると机の上に手紙を置き、前に正座してしばらく眺めた。 「がんばろう! がんばりましょう!」  今日、何度目になるかわからない掛け声を発し、意を決して手紙を開ける。
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