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第5話 こんにちは氷の竜王様
早速捕まりました。
はい、速攻逮捕です。私だけ。
変装してたはずなのに。
少年オリバーなはずなのに。
確かに兄貴2人は異様にイケメンででかかったかもしれないけど。彼ら2人は通して私だけ逮捕って……どういうことだろうね。
国境にただ1つある門では、1人1人豪華な楕円形の鏡の前に立たされた。私の前に並んでいたウィリアムやカールは「次」、「次」、としか言われなくて、鏡の脇に立っている門番の皆さんも動かないから、後について私も通れるかと思ったのに。
「少年、止まりなさい」
って!
鏡が言ったの!
感情のない男性の声だった気がする。
ガバッと門番の皆さんが一斉に動いて、私を捕獲しようとかかってきた。
するとウィリアムが私の前に立って、すっと手を広げた。
「私の弟が何か?」
先に行こうとしていたカールも唸り声をあげながら戻ってきて門番の皆さんを威嚇するもんだから、場が騒然となってしまった。
するとまた鏡が言う。
「貴方の弟だと? そのクウェイモが?」
周囲が一瞬、水を打ったように静かになった。
「クウェイモ……だと?!」
「まさか……クウェイモが、」
「ついに……開戦か……?!」
「クウェイモだ! クウェイモがいたぞ‼」
門番の皆さんが恐怖に顔を歪め、後ろに並んでいた人たちが騒ぎ始める。大急ぎで走って逃げる人が何人もいた。我こそはと勇ましい顔付きの老若男女だけが残って、こちらへじりじり迫ってくる。
しかし、また鏡が言った。
「静まりなさい。丁重に城へお連れするように」
私はウィリアムとカールの手を引き、目配せする。
それから鏡を振り向いて言った。
「兄貴たちを無事に通して、国内での安全を保証してほしい。条件を呑んでくれるなら暴れないと約束する」
「宜しい」
鏡は意外とすんなり条件を承諾してくれた。
ウィリアムは何だか悟ったような表情で、私の頭をぽんと撫でて耳打ちした。
「髪の毛は絶対に切らないでね、オリビア」
カールはずっと納得のいかない顔でごねていたが、ウィリアムの説得に渋々頷いた。祈るような顔付きで、後ろ髪を引かれるように振り向くカールが門の向こうに消えるのを見届ける。
私は門番の皆さんを振り向いて微笑んだ。
「さあ、行こうか」
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