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「お久しぶりです……!」
城の広間へ続く扉。
深い青色に、銀色で複雑な装飾のされたその扉の前まで来たとき、スター将軍が駆けてきた。
将軍の目配せに、私を連行してきた兵士達が去って行く。
廊下には私と将軍、それから扉を開ける係らしき2人だけになった。
うむ、血色が良い。すこぶる元気。
ドラゴンリバーがムーンライトに対抗する勢力を匿っているという噂に間違いはなさそうだ。
「命を助けてくださり、誠に恐悦至極……。このご恩はいつか必ずと心に決めておりました」
颯爽と跪き、手に口づけてくる将軍。
よかった、我が国のイケメンはイケメンたらしめている。
私は将軍の手を引いて立ち上がらせ、声を落として言った。
「ああ。国王との橋渡し、感謝する。多少予想外の出来事もあったが……謁見が叶うのだ、機会を活かさない手はないな」
言葉に頷いた将軍だったが、私の格好をまじまじと見て目を点にしている。
「オリビア様……ところでその格好は。いや……そんなことよりも、どうして門で連行されたのです? 伝言では宿屋で落ち合い、城へお連れする手筈だったではありませんか」
「さあ。それは国王が知っているだろうな」
私は肩を竦めて質問をし返した。
「国王に私のことを何と伝えてくれたのだ?」
「……あ、はい。ご命令の通り、王女であることは伏せてあります。ただ、『女王ミラベルに対抗できる唯一の存在』が近いうちにドラゴンリバーにやって来るとだけ」
「そうか。感謝する」
私は将軍の手をむんずと握り、上下にぶんぶんと振った。
「それで、この扉の向こうに国王が?」
「はい」
「色々頼んで申し訳ないが、取り次ぎを頼めるか。実は色々あって身分を打ち明けたくないのだ。今の私は17歳の少年オリバー。猟師の息子で、兄2人とこの国にやって来た……ということを頭に叩き込んで紹介してほしい。『女王ミラベルに対抗できる唯一の存在』については私の口から説明する」
私が一息に言うと、将軍は驚いた顔で復唱する。
「少年、17歳、オリバー。猟師の息子で、兄は2人……」
「そうだ、頼んだぞ」
「畏まりました」
頷いた将軍が扉を振り向き、手を挙げる。
いよいよ、グラキエース様の登場だ。
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