3人が本棚に入れています
本棚に追加
朝目覚めると、私は見覚えの無い部屋で昨日会ったばかりの男の人と同じベッドで寝ていた。
軽くパニック状態に陥る。
状況を整理してみよう、思い出そうか、自分・・・!
この隣の少し髪の長い男性は、会ったばかりのバンドマンだ。
昨日の夜、女友達がライブハウスに誘ってくれた。
そう、その時に出会った出演者で、その女友達の知人で。
まあ、正直めちゃ好みだったし。
内輪ノリの打ち上げにも付いて行ってしまい、ご機嫌良く飲んだ挙句に、こうなってしまったという事らしい・・・。
正直その後の事はよく覚えていないけど。
もしかして・・・
もしかしなくても、人生初めての・・・やらかしてしまったのかしら!?私・・・。
もう、最低最悪過ぎる。
覚えて無いなんて・・・。
バンドマンなんて、多分一番付き合っちゃいけない部類の人達だ・・・。
いや、むしろ付き合うとか、それ以前の問題なのかもしれないし・・・。
絶対、彼女たくさんいそうだし・・・(偏見かもだけど・・・)
そうこう考えてるうちに、隣の彼が目を覚ましたようだ。
「あ、おはよう・・・」
彼は、少なくとも上半身に服は着ていなくて。
私はと言えば、キャミソール姿。
慌てて服を拾い上げて着る。
彼は私を見て、
「昨日は、盛り上がったね」
と言った。
私は真っ赤になって俯いた。
どういう意味なんだろう!?
やっぱり、そういう意味・・・!?
そして彼が、
「ところで、君、誰・・・?」
と言った。
ガーンと、ふいに頭を殴られたような気分。
私は誰かも分からないくらいの、たくさんの女の子のうちの一人ってわけだ・・・。
うん、そんなような気はしてたし、分かってた事だけど・・・。
本当に最悪過ぎる・・・この人も、私も・・・。
私は、なんとかやっと口を開いて、
「あのう・・・、ごめんなさい。
私、その・・・ここに来た事とか、ぜんっぜん覚えて無いんですけど・・・。
分かってます。
自分でも最低最悪だって・・・」
そう言うと、彼は少し驚いたように言った。
「ああ・・・誤解させる言い方だった・・・?
なんも無いし・・・。
俺、そこそこな泥酔っぷりの女の子に手ぇ出す趣味も無いし、そこまで困って無いし・・・。
覚えて無いかもだけど、打ち上げで好きなバンドの話で超盛り上がった後に、酔い過ぎてフラフラになって気分が悪いって言うから、そのまま店にも放置出来ないし、家が徒歩圏内だった俺のとこに来たってわけ。
まあ、誤解させたとこは、ごめんなさい・・・」
それを目を丸くさせながら聞いていた私だったけれど。
「どっちにしても、私、大変ご迷惑をおかけしました。ごめんなさい・・・。」
と、深々と頭を下げた。
「でも、なぜあなたは、その・・・服を着てないの・・・?」
私が聞くと、彼は、
「あ、これはいつもの癖で・・・今、着ます・・・。
ちなみに君は自分で脱いでました・・・」
と、答えた。
恥ずかしい・・・消えてしまいたいと思った・・・。
そして彼が私を見つめると、
「で、・・・君は、誰・・・?
聞いて無かったから、名前と、連絡先が、知りたいってこと・・・」
って、イタズラっぽく笑って、
私のおでこにキスをした。
ドキドキと、胸の鼓動が早くなる。
私は真っ赤になって、
「はい・・・
村瀬芽郁です・・・」
と答えた。
自分でも意外だったけれど・・・。
そうだ、はっきりと思い出した・・・。
私は、最初から、ステージに立つ彼に魅了されていたんだ・・・。
好きな事を話す彼も、とても魅力的だった。
楽しくて、ドキドキしたけれど。
ドキドキし過ぎて、思わず、飲めもしないお酒を、ついつい勢いで飲んでしまったんだっけ・・・。
最初のコメントを投稿しよう!