壱 かむくらの社

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着物に着替え、居間のような部屋で用意されていた朝食を摂ると、またトウダさんに連れられて長い廊下を歩いた。 歩いていてわかったけれど、この屋敷には今のところ私とトウダさん、禄輪さんの3人だけしかいないらしい。 普段は使われていないのか、所々床が抜けていたり柱に蜘蛛の巣が張っていた。 玄関で草履に履き替え外に出た。木々の匂いが深い。うんと森の奥にいるようだった。 「巫寿さま、こちらです」 そう言って案内されたのは、大きな神社のような建物だった。 賽銭箱や鈴がかけて合ったのでそこが神社であることを認識する。 なぜこんな所に……? 不思議に思いながら、トウダさんにならって草履を脱ぎ、本殿の中へ入った。 祭壇の前に人がひとり座っているのに気がついた。 真っ白な袴に、白衣を身につけた男性。ひとまとめにした波打つ髪に見覚えがあった。 「あ……」 その声に気がついたのか、男性は半分体を回転させて振り向く。 優しげなタレ目とあごひげに確信を持つ。 「おはよう、よく眠れたか?」 「あ……はい。あの、もしかして禄輪さん、ですか?」 「ああ、私が神母坂禄輪(いげさかろくりん)だ」
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