壱 かむくらの社

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「巫寿の中にも、言葉を自由に操ることができる言霊の力は備わっている。あの二人の子供だからな」 「で、でも私はそんな力があるなんてこれまで一度も」 脳裏に昨夜の妖を禄輪さんが一瞬で消し去った光景が思い浮かぶ。 何かを唱えていたのは、きっとその「言霊の力」を使っていたのだろう。 「扱うのにはある程度の訓練が必要なんだ。力があっても、そう直ぐに扱えるものでは無い」 そう言われ、少し己が恥ずかしくなって口をとざす。 そんな私を見て、禄輪さんは頬笑みを浮かべて手を伸ばすとぽんと私の頭に乗せた。 「一気に色んなことを知って混乱してるだろう? 今日はこの辺で終わりにしよう。部屋で休みなさい。鳥居の中なら安全だから、外の空気を吸うのもいいだろう。祝寿の“おまじない“も何重にもかかっているようだし」 「おまじない?」 「毎日、祝寿となにか日課にしていたことがあるんじゃないか? 目には見えないけれど、小さな邪気なら吹き飛ばすほどの言霊が巫寿にかけられている」 目を見開いた。心当たりがある。「いってきますのおまじない」だ。 「繰り返しかけていたんだろう、簡単には効力が切れないくらい強固なものになってる。昨日もその痣で済んだのは、祝寿の言霊のおかげだろう」
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