壱 かむくらの社

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部屋で一人きりになるのが怖くて、結局居間にとどまった。 私の気持ちを察してくれたのか、禄輪さんも残ってくれて静かに誰かへ手紙を書いている。 黙ったまま俯いている私をたまに気遣う様に見てはそっと微笑んでくれた。 聞かされたことを一つ一つ思い出していく。 お父さんとお兄ちゃんは神主で、お母さんは巫女。 人の世界と妖の世界の間にある神社で、妖を統治する神職の仕事をしている。 神職になるには、「霊力」と呼ばれる言葉を自由に操る力が必要で……。 どれもこれも信じがたい話ばかりで、でも昨日の出来事がそれらを信じざるを得ない状況にする。 何度も言われたけれど、この首の痣こそが聞かされた全てを証明することになっている。 ……禄輪さん、とってもいい人だな。 すごく優しい目をする人。手が大きくて温かかった。お兄ちゃんとは少し違う。お父さんが生きていたらあんな感じなのかな。 そういえば、昨日助けてくれたお礼をいえなかった。 お父さんとお母さんの話ももっと聞きたい。 あの時はいっぱいいっぱいで詳しく聞けなかったけれど、言霊を操るってどういうことなんだろう。 神主って、巫女って、どんなことをするんだろう。 お父さんとお母さんは、どういう風に過ごしていたんだろう。 お兄ちゃんは、私の知らないところで毎日あんな怖いものと戦っていたの……?
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