■Case 1:トアの場合

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 彼に恋心を抱いたのは12歳のころ。合同の任務で些細なことからケガをしそうになった時に助けてくれたことがきっかけだった。  トアには兄弟がいない。一つ年下の雅のことはずっと弟のように思っていたのに、この時初めて、雅が頼れる男の子だと認識したのだ。家族でも側近でもない人に助けられたのは初めてだったことも影響しているかもしれない。  恋に落ちるのなんて、一瞬である。  トアにとって初めての恋だった。  雅に対して抱く感情は今まで誰かに感じたことがある感情とは全く違う。嬉しさも、辛さもある。見かければ目で追ってしまう。会えなければ考えてしまう。目を閉じれば雅の笑顔が浮かんでくる。  このドキドキは紛れもなく『恋』だろう。  こんなにも胸が苦しくなることがあるものかと、トアは初めての感情に戸惑った。  そして誰かから聞く彼の名前にすら、こんなに嬉しい気持ちになるのだ。  心をときめかせているトアを見て、リジーは笑った。 「ふふ、やっぱりあなたは私の娘ね」 「どういう意味ですか?」 「好みの男性のタイプが一緒ってこと」  その言葉にトアは怪訝な表情を向けた。 「…母上の好みのタイプは父上でしょう?理解できませんけど」  トアは自分の父親のことを思い浮かべた。とてもじゃないが雅と同じタイプとは思えない。  トアが何を想像しているか分かって、リジーは引き続き笑いながら答えた。 「ん~そうねぇ、あの人は私の好みってわけじゃないけど」 「?」 「でも大丈夫。もちろんあの人のことは好きだし、愛しているわ♪」  やっとトアを解放し、リジーはウインクしながらドアへと向かった。 「あ、そうそう、エリーシャがあなたを探していたわ」  振り向き様にそう言うと、含みをたっぷり持たせてリジーは続けた。 「…その雅から、連絡があったみたいよ♪」 「…ちょっ…それを早く言ってください!」 ***
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