Triangle-toma-

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「ねえ、一度当麻のご両親にご挨拶に行きたいんだけど」 悪阻も治まり、再び喫茶店に出れるようになった真琴がそう言ってくれる。 お腹の子も順調に育ち、安定期に入ったからだろうけど、僕はそれには少し不安だった。母は真琴をよく思っていないだろうから・・・。 「オレは大丈夫だよ。もともとオレが悪いんだし、お義母さんによく思われてないのも分かってるから。でもやっぱり、一度挨拶しときたいんだ」 そう言ってくれる真琴が嬉しい。 だから僕は母に会いに行く旨をメッセージしたのだけれど、それには返事がこない。何度かメッセージをしてみるけど、全て既読無視。本当は都合のいい日を聞いてから、と思ったけれど一向に返事が来ないので、僕は週末帰ることを伝え、一応父にもメッセージをした。 父を訪ねたあの日、門倉さんから父のアドレスを聞いていたのだ。 そして当日、実家の前。 前もって行く時間を言ってあったので、もしかしたら出かけてしまったか居留守を使われるかと心配したけど、鳴らしたインターフォンにちゃんと出てくれた。けれど、それは父だった。 父さんがインターフォンに出るなんて・・・。 その事に驚き、もしかしたら母は出かけてしまったのかも、と心配しながら入った家の中にはちゃんと母もいた。いたけど完全に拗ねた様子でリビングのソファに座ったっきり。しかも挨拶をしても無視をする。だから僕達の相手をしてくれるのは父なのだけど、僕にはそれが慣れなくて、なんだか背中がゾワゾワする。だって、いつも動かず喋らずの父が喋ってるだけでも違和感なのに、動かない母に変わってお茶を淹れにキッチンに行ったんだよ?そんな姿初めて見た。 そんな父を知らない真琴にはそんな違和感はなく、嫁(?)として手伝うために一緒にキッチンに行ってしまった。 母と二人きりのリビングに、気まずい空気が流れる。 「ごめん、母さん」 まずは謝ってみるものの、母はツーンと横を向いたまま。 「母さんの望むとおりにはできなかったけど、僕は今すごく幸せだよ。だから母さんにもそれを伝えたくて・・・」 もう返事がなくてもいいからと、僕は話し続ける。 「向こうのお嬢さんにも申し訳ないことをしてしまったけど、僕が話して分かって貰えたし、父さんも認めてくれた。あとは・・・」 母さんだけ・・・と続けようとしたら、急に母は目に涙をためて泣き出した。 「ほんとよぉ。みんなして当麻を許してあげてって言うのよぉ。パパも麻弥ちゃん(元婚約者)も、どこで聞いたのか、お兄ちゃんまで言うのよ?これじゃあママだけ悪者みたいじゃないのぉ」 涙をぽろぽろ流し始めるから、僕は慌ててテーブルのティッシュを何枚か引き抜いて母に渡す。するとそれを目に当てる母は、まだ涙に濡れる目で僕を見る。 「ママだって、当麻の幸せを考えてるだけなのに・・・」 そう言ってじとっと見る母。ああ、これはもしかして、引っ込みがつかなくなっちゃったのかも。元々プライドが高い母は自分から折れるのが好きじゃない。なのにみんなから言われて余計に折れられなくなったのだ。 「分かってるよ。母さんが僕のためにしてくれたことだって。僕が悪いんだ。母さんは悪くないよ」 「本当にそう思ってる?」 「思ってるよ。母さんはいつだって僕の幸せを願ってくれてるって。今回だって、その方が僕のためにいいと思ってくれたんだよね?」
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