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「よーし、席につけー」
担任の教師が入ってきた。生徒たちはおしゃべりをやめ、一斉に席につく。
「最近市内で通り魔が出てる話はみんな知ってるなー。学校周辺も警戒区域だから、警察官が巡回してくる。何か聞かれたら協力するように。そんで、暗くなる前にちゃんと帰れよー」
学校終わりに、天登はバイト先のハンバーガー店へ行く。近くで高校生を雇っているのはここだけだ。
天登の家は母子家庭なうえ、母が病弱なため、天登は少しでも稼がねばならないと考えていた。天登の学校は県一番の進学校で、バイトしてる生徒はごく一部だ。
「じゃあ先に上がらせてもらいまーす」
20時になったので、天登は店長に声をかけた。
「おぉ、天登君、ちょっと待って、はい、これ」
店長が名物の特製野菜バーガーを3つ包んでくれた。
「お母さん、こういうの食べられないかな?」
店長はよくこうやって、天登にお土産を持たせてくれる。
「いえ、喜ぶと思います!ありがとうございます!」
店を出て家路を急ぎながら天登は考えた。
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