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2.催魔《さいま》
天登は、学校帰りに夕飯の材料と日用品を買って、家路に着いていた。今日はバイトはない。あかりは後で本を返しにくると言っていたな。いつでもいいのに、ホント律儀なやつだよ。
アパートに近づくと、敷地前の路上に人だかりができている。
(なんだ?)
急ぎ足で近づいてみると、天登は驚いた。
「か、母さん!」
天登の母は、寝巻き姿の裸足のまま、アパートの階段下に立っていた。
手には出刃包丁。目は虚だ。
警官が拳銃を構えている。パトカーの傍でもう1人の警官が無線を使っている。
野次馬は警官から少し離れ、遠巻きにみている。
「う、動くな! 動くと打つぞ!」
明らかにうろたえている警官。
天登は、思わず拳銃の前に立ちはだかった。
「やめてくれ! 俺の母さんなんだ! 撃たないでくれ!」
「君! どきなさい! 刃物を持っているんだぞ!」
「俺がなんとかします!」
「母さん、母さん、俺だよ、天登だよ、わかる?」
「ア、アマト‥?」
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