「雪の日に」

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 校庭が真っ白になる景色を初めて見た。  二月も中旬になり寒さがピークを迎えたとはいえ、この地域での積雪は珍しい。雪化粧はまったく似合わないというのに、図書室の窓から見える街並みは自分のことを雪国だと錯覚したように恐ろしいほど張り切っておめかしをしている。 「相変わらず暇そうだね」  隣に座る村川先輩が文庫から視線を外し、こちらを一瞥した。指先に引っ掛けた艶のある長い髪を耳殻まで持ち上げて、つまらなさそうに受付台の上に頬杖を付く。 「当番として来ているんですからまじめにしてください」 「引き受けた以上、職務を全うするべきだというのかい?」 「その通りですよ」 「倉沢は、相変わらず真面目だねぇ」  村川先輩は受付台を掴んだ手を真っ直ぐ伸ばし、「そんなんじゃモテないよ」と口端をイタズラっぽく緩めた。 「大きなお世話です」 「ふーん、誰かいい人がいるのかな?」 「別にいませんよ」  クスクスと笑いながら村川先輩はまた文庫本を読み始める。モテないのは事実だが、面と向かって笑われると少しだけ傷つく。 「先輩こそ暇そうですよ」 「もう大学も決まったしね」
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