「雪の日に」

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 足立に用事が出来たらしいが、今日に限って代わりが見つからず、村川先輩がその役目を買って出たらしい。というのも、昨日の段階で降雪の予報が出ていて、土曜日で乗客が少ないことを見越してか、交通機関が早い段階で減便や運休を決めてしまっていた。代わりたくとも代わってやれない委員の子が多数いたようだ。  一方、村川先輩の家は歩いて来られる距離だったらしく、藁にもすがる思いで足立が頼み込んだらしい。というのが村川先輩談だ。おそらく足立は泣きついてなどいないのだろうけど、急を要する用事があったのは事実なのだろう。クラスメイトとして足立がズル休みをするようなやつじゃないことは明言できる。 「とはいえ、今日は俺一人でも良かったかもしれないですけどね」  野外で活動する部活はもちろん、人数が集まらないという理由で、ほとんどの部活が休みになっているらしく、学校に人気は少ない。ただでさえ普段から人が来ないこの図書室に、この雪の中をわざわざ出向こうという物好きがいるとは思えなかった。 「今日は誰も来ないと?」 「そうですとも。雪になれていない俺たちは歩くのも一苦労です」
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