「雪の日に」

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 返却期限は一週間なので、先週の貸し出し履歴を調べる。施設が古いのとさほど頻繁に貸し出しが行われないため、未だに記録はノートで管理されている。二ページさかのぼった先週の土曜日には、五冊の貸し出しの記録が残っていた。これは驚くべき繁盛っぷり。学校レコードなるものがあるなら、間違いなく土曜日の貸し出し記録二十一世紀部門の最高記録として後世に語り継がれるレベルだ。  ――けれど。 「平日のうちに全部返却されてますね……」  生徒の学籍番号と貸し出された本のタイトルの横に、もれなく返却日の判子が押されていた。  もちろん、期限を過ぎた本を返そうという者もいるかもしれないが、こんな雪の日に出向いてくるような責任感のあるやつは期限内にちゃんと返すはずだ。この線は言及するだけ無駄だろうと思ったが、村川先輩がその人物にちゃんと返すように叱咤した可能性もある。 「誰かを叱ったりしてないですよね?」 「叱る? 私が?」  言葉足らずだったが、ピンと来ていないということはやはりこの線はないらしい。 「一つ目の回答ははずれだね」 「回数制限があるんですか?」
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