「雪の日に」

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 十日前である四日の日付を見てみるが、特に貸し出しの記録はない。ページを捲りながら気がついたが、そもそも訪れるだけで借りている保証はないじゃないか。念の為、三日や五日おきも確認してみるが同様の結果だった。 「残念、その説は面白いけどはずれだね」 「あまり期待はしていませんでしたけど」  強がって見せるが、盲点を突いたいいアイデアだと思っていた。こだわりがある者ならたとえ雪が降ろうとも槍が降ろうとも訪れることをいとわないと思ったからだ。そもそも定期的に図書室を訪れる意味は分からないのだけど。 「図書室を普段から使っている生徒を知っているなんて単純な話じゃないってことですよね?」  自習で使うものだっているし、ぼんやりと一人の時間を過ごすために図書室を使うものもいる。人気のないこの学校の図書室ではそういう生徒は少なくない。 「もちろんそういう子がいることは知っているけど、私が言う根拠はその子のことじゃない」 「そうですよね。それだとこの雪の日にわざわざという条件に当てはまりませんから」  とはいえ、記録から遡れることだけが図書館の正当な利用方法でないことは分かった。
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