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商業ギルド
噴水広場前には建物が幾つか建っていたが、ギルドと思わしきレリーフが飾られていたのは、一際大きな一軒だけだった。
中に入ると、広いエントランスと壁際の掲示板に幾人かが居て、カウンターには受付嬢が何人も控えていた。
壁際の掲示板に近付くと、街中での荷運びや品物の取り寄せ等が載っていた。前金が有る依頼があったので受けてみようと、受付嬢に話しかけた。
「すみません。彼方の掲示板にある依頼を受けてみたいのですが、どうすれば良いですか?」
「商業ギルドの登録はお済みでしょうか?」
「いいえ」
「でしたら、此方の書類に必要事項を書き込んでください。登録完了後、ご依頼を受けられます」
渡された書類に文字を書き込む。依頼に書かれていた文字もそうだが、観たことのない文字を何故か読めるし、その文字をスラスラと書ける。
「登録完了です。どのご依頼を受けますか?」
「携帯食のヤツを」
「執筆家のご依頼ですね。前金として銀貨一枚。お届け先に持ち込まれてから、後金として銀貨四枚が受け取れます。宜しいですか?」
「はい。お願いします」
銀貨と簡易地図が書かれた受領書を受け取り、ギルドを出る。人目のつかない路地裏に入り、スキルを使用する。
「ショップ」
店舗が出現したので、手に持つ銀貨を消費しようと考える。
商品のラインナップがパネルに表示されたので、携帯食を選ぶ。カウンターに携帯食が出現すると、銀貨が無くなる。
店舗が消えてから、裏路地を出て目的地に向かう。少し豪勢な家に着き、扉を叩く。
「はい、どちら様でしょうか?」
扉が開くと、メイドらしき女性が出てきた。
「商業ギルドに出されていた、依頼の品を届けに来ました」
女性に携帯食を渡すと、包み紙を取って一口含む。毒味も兼ねているのだろう。口をモゴモゴした後飲み込む。
「少々お待ち下さい」
女性がお辞儀をしてから扉が閉まり、足音が遠退くのを聞き、暫くして又扉が開く。
「此方が後金になります。ご主人様が大変満足しておりまして、銀貨五枚となります」
チップかな、ありがたや。受領書にサインを貰ってギルドに戻る。受領書を受付嬢に渡してから、掲示板を眺めに行く。
夕食のデザートに銀貨十枚も出すとか、面白い依頼を見付けたので受けに行く。
「富豪のご依頼ですね。此方は、食べた際に感動したのならば、追加報酬が出ますが、代わりに不満ならば銀貨一枚になります。宜しいですか?」
勿論受諾。路地裏で店舗を出して、銀貨三枚を持ちラインナップを見る。プリンアラモードが有ったので選ぶ。
目的地に着くと、其処は最初の依頼よりも立派なお屋敷で、門扉に兵士が就いていた。
「商業ギルドの依頼で来ました」
「少々、お待ち下さい」
デザートの入った箱を受け取り、門の中に入って玄関の扉を叩く兵士。出てきたのは、モノクルをかけた老人執事。
箱を開けて中を覗き込んだだけで箱を持って退室。観ただけで食べないでも大丈夫なのかな?
執事が戻ってきて、兵士に小袋を渡す。兵士が門扉に帰ってきて、俺に小袋を渡してきた。
「此方が依頼の報酬となります。ご苦労様でした」
サインも貰い、ずしりと重みが手に伝わっていたので小袋の中身は銀貨十枚だと確信する。
ギルドで受領書を渡して、帰りにお薦めの宿を聞いて泊まる。美味しい食事をとってから、柔らかなベッドで就寝。明日の朝食が楽しみだ。
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