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露店販売
翌朝、朝食に舌鼓を打ってから宿を出る。銀貨五枚しただけはあったな。
街中を練り歩き、朝市に出くわす。食材が殆どだが、中には小道具や装飾品を売っている出店もあった。
眺めるだけで買い物はしないまま、商業ギルドに立ち寄る。掲示板は観ずに受付嬢へ話しかける。
「露店を開きたい場合、どうすれば良いですか?」
「場所代に銀貨一枚、出店の貸し出しに銀貨二枚となります。歩行の妨げにならない場所で販売されるのでしたら許可証発行に銀貨二枚となります」
「じゃあ、許可証発行で」
銀貨二枚を渡して、許可証を貰う。レリーフと同じ柄の紐付きメダルだった。首にかけて退出。
表通りから少し陰になっていた場所で店舗を出す。残りの銀貨を手に持ち、ラインナップを眺める。
「へー、こんな物まで有るんだ」
一番嵩張りそうな品物を選んで出現させる。銀貨が全部無くなるが、これは売れれば三倍は固いな。
カウンターに飾られた一品物がかなり目立つのか、表通りを歩く人達が此方の方を覗いたり、一度立ち止まってまじまじと眺めたりした。
高そうに思われていたのか、観るだけで話しかけては来なかった。お昼になった辺りで身綺麗な少女にメイドが付き従った客が現れた。
「この品物、手にとってみても良いかしら?」
「どうぞ、どうぞ」
バリアーも他人には見えていない様で、心の中でも二人の進入を許す。
「とても良い抱き心地ね。お幾らかしら?」
「金貨十枚、と言いたい所ですが、初めてのお客様ですし金貨五枚でお譲りしますよ」
元手が銀貨なので、値切られても全然構わないので吹っ掛けてみた。
「あら、そんなにお安くして頂けるのでしたら、即決ですわ。支払って頂戴」
「畏まりました」
メイドが懐から金貨五枚を出してきた。マジかよ。
「毎度あり。嵩張るのでお気をつけ下さい」
品物をメイドに渡す。巨大なぬいぐるみ、抱き心地が最高なのか、微笑みながらしっかりと持ち帰るメイドと、抱き枕代わりが手に入りご満悦の少女を見送る。
人目がなくなってから、店舗を消す。魔力足りて良かった。今の所、出しっぱは五時間くらいが限界だな。
お昼を食べに、レストランへ行こう。通りに面したお店で、デザート付のランチをバルコニーで食べながら、人物観察と洒落込もう。
次なる客層を見定めて、腹を満たし終えて同じ場所に舞い戻る。人が途切れたタイミングで店舗をだして、金貨を三枚取り出す。
ラインナップは多岐にわたり、選ぶのには苦労した。今回は小物中心できらびやかな品々。気分は自作アクセサリー売りの怪しい兄貴。
ちょっと小洒落たい女性が目敏く立ち寄り、値段と相談。一点銀貨二枚、セットや纏め買いなら二割引を謳い文句にすれば、悩みながらも複数購入に踏み切る。
数十有った品物は三時間もかからずに完売し、手元には銀貨が百枚、銅貨が数十枚。重くなりそうなので、銀貨と銅貨纏めて消費して酒に変える。
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