カクテル

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カクテル

 金貨一枚で柑橘類を手当たり次第購入してから、店舗を出す。  残りの金貨全部で幾つかの木製カップと大量の氷、樽一杯の炭酸水と蒸留装置、序でにライターをラインナップから選ぶ。蒸留装置ってコンパクトだけれど高いな。  酒を蒸留酒に変えて、ライムっぽい柑橘を選び、炭酸水と他の柑橘を混ぜて炭酸飲料を作る。  これだけで数時間かかった。理科の実験な感じで疲れたよ。日が落ちて、夜の街に様変わりする。  木製カップに氷を沢山入れてからライムを絞り、蒸留酒を少々注いで、最後に炭酸飲料を並々入れて、なんちゃってカクテルの完成。 「さてと、お味は・・・」  鼻を擽る香りにほのかな甘味、炭酸に混じった酸味と苦味が喉ごしに伝わり、さっぱりとした飲み心地。うん、上出来。  カクテルを幾つかの木製カップに作り終えて、いざ販売開始。 「仕事帰り、飯屋に行く前に一杯、冷たい酒を引っ掻けていかないかい?」 「あん? 酒を売ってるのかよ。幾らだい?」 「この木製カップで銀貨五枚だよ。味は保証する」 「随分と強気じゃねえか。よし、俺が一丁試してやろう」 「毎度」  冒険者風の強面な男が誘いに乗ってきたので、仲間の連れを含めて許可を心の中で出してから、木製カップを掲げる。銀貨五枚を俺に渡してから受け取り、口に含む男。 「うお、冷てえのは氷のせいか。それなのに酒が全然薄まっちゃいねえ。しかも何だよ、この喉ごし? かー、たまんねえ!」 「おい、俺も買うぞ、飲ませてくれ!」 「アタシも!」  仲間の連れが我先にと銀貨を渡そうとする。予め許可を出しておいて正解だったな。木製カップを其々に渡して直ぐ、彼等はグビグビ飲んでいく。  あー、スーパーなドライの酒が飲みたくなるなぁ。 「う、ウメエ。何だよこの酒、一杯じゃ全然足りねえよ」 「いえ、酒の濃度が以外と高いんで、お一人様一杯迄にさせてください」  蒸留酒薄めて濃度は五%程度だけれども、説明が面倒なので限定にする。 「何々? そんなに美味しいの? 私にも一杯頂戴」 「ワシにもくれえ」  客が後から続々と湧いてきた。心の中でさっさと許可を出し、買い付けた数十人が瞬く間に飲み干し、僅か数十分で完売となる。銀貨が大量で重いわ。  客が居なくなってから、店仕舞いして商業ギルドへ。面白いことに、蒸留装置やその他諸々も、店舗と一緒に消えたのだ。  パネルに目を向ければ、消えた諸々が羅列されていた。店舗の一部扱いになったのか。便利だな。  ギルドで銀貨を少し残して、後は金貨に換金して身軽に。昨日よりも豪華な宿を紹介して貰い、其処へ向かう。  美味しい食事と更にフカフカなベッドで気持ち良く就寝。翌日の朝食を食べながら二十枚以上になった金貨の使い道を考える。  露店で出せる品物の価格は良くて銀貨数枚。金貨にして買ってくれるのは、貴族レベルの金持ちくらい。  考えが纏まる前に食事が終わったので、ブラリと街を徘徊する。良い商売のネタは転がっていないものかね?  そういえば、掲示板を観ていなかったことを思いだし、商業ギルドに足を向けた。
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