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スキル:ショップ
俺は今、見たことのない半透明なパネルを前に呆然としていた。
交通事故にあって、意識を失ってから気付けば、見知らぬ場所にいて、困惑していた時に突然中空に現れたからだ。
「スキル:ショップ? スキルってゲームとかで使える能力の事だよな?」
恐る恐るパネルに触れると、スキルの詳細が表示された。
「ショップ:『ショップ』と唱えて魔力を消費することで、その場に簡易結界が施された店舗が出現する。魔石、又は通貨を消費することで、商品が出現する」
簡易結界? 説明文に触れると、その詳細が更に表示された。
「簡易結界:周囲から許可を得ていない者が進入出来ないようにするバリアー。この結界内では暴力行為を行おうとすると、問答無用で結界外に弾かれる。簡易の為、一定時間毎に魔力を消費しないと消滅する」
「ショップ」
試しに唱えてみた。すると、魔方陣らしきものが地面に描かれて光輝く。そして、身体から何かが抜き取られた感覚があり、軽い目眩がした。
目眩が治まって改めて周りを見ると、祭りの時に並んでいる出店みたいな店舗の中に自分が居た。更に、薄明かりみたく店舗を包むような半透明の膜がドーム状に出来ていた。
暫く経つと、又身体から何かが抜き取られる感じがした。パネルを良く見ると、[魔力]と表示されている横の数値が減っていた。
魔力を消費した際の焦燥感だと判断して、維持を止めようと考えながら暫くいたら、今度は膜と一緒に店舗が消えた。
多分、あの膜が簡易結界なのだろう。時間感覚的には十分に一回、魔力を消費する必要がありそうだ。
パネルを暫く眺めていると、魔力の数値が変動した。魔力は時間が経てば自動的に回復するようだ。
こうなると、今度は商品を出してみたい。それには魔石とやらか、通貨が必要になる。どうやって手にいれようか?
ゲーム的には魔石は魔物を倒せば手にはいるのだろうが、俺は戦闘なんて御免だ。となると、通貨を手にいれる方が手っ取り早いか。
「街を探すか」
辺りを見回して街道を探す。それらしき道を見つけて日が落ちる方角に向かって歩き始める。
歩いている途中でも、魔力は回復していた。少し走ってみたら、その間は魔力が回復しなかった。体力をソコソコ消耗するような行動中は回復が行われないのか。
数十分歩いた先に街が見えてきた。門番はいるが、門は開いている。暮れる前にたどり着けた。
映画でしか観たことのない、鎧に身を包んだ門番が俺に気付いたようで、顔をこちらに向けてきた。
「こんにちは。街へは入れますか?」
「観ない格好だな。この街は初めてか?」
良かった。言葉が通じた。それと、視線は俺にしか向いていないから、中空にあるパネルは俺にしか見えていないようだ。
「はい。それと、来る途中で荷物を失くしてしまい路銀がありません」
「それは大変でしたね。街へはこの宝玉に触れて赤く光らなければ、タダで入れるよ」
門番が台座の上に飾られている、顔位の丸い玉を指して言った。
俺は宝玉に触れてみる。すると、宝玉が淡く青色に光出した。
「問題なさそうだ、ようこそ。路銀を稼ぎたければ、この先の噴水広場前にある、商業ギルドに寄ると良い」
「ありがとうございます」
俺はお礼を言って街に入り、噴水広場を目指した。
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