セルティスのバレンタインデー

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セルティスのバレンタインデー

 セルティスは、のんびりとコーヒーを飲みながら、おひとりさま時間を堪能していた。窓際に座って、のんびりと静かに過ごす、この時間が一番、リラックスできて好きだ。コーヒーを一口、含み、深呼吸をする。日差しが暖かくて心地が良い。気分もリフレッシュできる。  外では、小鳥たちがチュンチュンと可愛い声で鳴いている。小鳥たちの声も癒してくれている。セルティスは、小鳥たちを眺めながら、また一口、コーヒーを飲む。そのとき、マスターが声をかける。 「セルティス、その場所、好きだなぁ」 セルティスはマスターの声に、優しくニコッと笑った。そう、この場所はとても良い。普段の戦いを忘れさせてくれる。ずっと、こんな日が続けばいいのにと、いつも思う。こういう日が続くようにするためにも、四天王を阻止しなければならない。そう決意させた。 「そういえば、セルティス、もうすぐバレンタインデーだけど、彼氏にあげるの?」 マスターが唐突に訊くものだから、セルティスは口に含んだコーヒーを吹き出しそうになり、咳き込んでしまった。 「バ…バカ言うなって…そんな関係じゃない。ただの仲間だ」 セルティスは、何故だか、顔を赤く染めている。なんだか熱くなってきた。彼氏と言われただけで、ドキドキしてしまうのは、やっぱりホークのことを好きなのだろうか。そんなことを考えた。 「えっ? 随分と仲がいいじゃないか。たまには素直になりなよ」 マスターがニヤリと笑って、肩を叩く。セルティスは、マスターに肩を叩かれ、またしてもコーヒーを吹き出しそうになった。 「ただの仲間だってば!」 思わず、ムキになって言うと、女の子の声がする。 「良いなぁ、私も大人の恋してみたいわ~」 その声は、ミラトである。ミラトは、マスターにココアを頼むと、セルティスの前の席に座った。 「なんだよ、ミラトまで……」 セルティスは、顔を真っ赤にしている。  ミラトは、セルティスの様子にニヤニヤした。何を企んでいるのだろうか。セルティスは嫌な予感がする。 「そうだ! チョコ作ろっ! きっと、ホーク喜ぶよ~! セルティスが作ったチョコなら、なおさらね!」 ミラトが人差し指を立てて、ウインクした。 「はぁ? 何言ってんだよ。いいよ、あたしは」 セルティスは、バレンタインデーのようなイベントが好きではない。だから、いつも、そのイベント日は無視だ。 「良いじゃない、いつも、好きな人にお世話になっているでしょ? だから、手作りチョコを上げて、お礼をするのよ」 ミラトは乗り気だ。 「苦手なんだよ、そういうの……」 セルティスは、ため息をついた。この勢いは、ミラトに付き合わないといけなくなりそうだ。 「女子力、アップさせたら、ホーク、嬉しいだろうなぁ」 ミラトは、ニヤリと笑う。セルティスは、そんなミラトに呆れる。 「ホークは関係ないだろ……」 ミラトは、目を細くして、セルティスを見つめる。 「あれっ? 何、照れてるの? ホークのこと好きなのに、素直に言えないんだから」 ミラトの言葉にセルティスは、少し、ムッとした。ただ、図星だ。セルティスは、自分でも気がついている。ホークのことが好きだと。でも、だからって、特別なことをしなくてもいいとセルティスは思う。 「ホークに喜んでほしいでしょ?」 ミラトは、強引にチョコ作りに参戦させるつもりだ。セルティスにとって、剣士として戦うよりも、チョコ作りのほうがきつい。しかし、喜んでほしいことも事実だ。 「それは……ホークが喜ぶ姿は見たいし、嬉しいけど……」 セルティスは、もごもごと言って、ハッキリしなかった。だが、ミラトは耳が良いのか、完全に聞こえていたようで、指をパチッと鳴らした。 「じゃあ、決まり! バレンタインデーに手作りチョコ、ホークにプレゼントしよう!」 ミラトはそう言って、勘定を済ませてセルティスを引っ張って、早速、チョコ作りのための材料を買いに行くことになった。
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