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―旅の景色Ⅳ 3日目、街道町メモン―
次に馬車を降りたのは、メモンと言う街道町。
近くに住居は無いようで、森ひとつ隔てた北側に、畑が広がり、住居と、店舗街が形成されているという。
規模としては、先ほどの街道町レモンと大差無いようだが、昼食時ではないこともあって、人の行き来は、かなり少ない。
「これなら、町を歩けそうですね。飲食は、馬車の中でするとして、購入は、ご自由になさってください。支度室は、手前の建物が整っているでしょう」
支度室と言うのは、大体、鏡と手洗い場のある、身嗜みを整えるための区画で、潅所が併設されているのが、支度室、という名称を使う国では、一般的だ。
これには、向かい合うような部屋があって、手を洗う場が背中合わせで2列、並んでおり、用途が違うため、形状や数、備え付けの物品が違う。
具体的には、片側は、不浄を洗い流す用途、もう片側は、自身の見た目を整える用途だ。
領都街道町の休憩場でも利用したが、建って間もない建物ということもあるが、清掃が行き届き、ひと息つくのに過ごしやすい場所だった。
今は、女子留学者たちも、旅のために、動きやすい服装なのだが、夜会服でも使えるよう、扱い難い下衣の裾を捌いてくれる仕掛けがあることに、すごく感動した。
あれは絶対、取り入れなければ。
そう思いながら、期待を膨らませて覗いてみると、やはりこちらも、清潔感あふれる空間だ。
長時間の馬車移動だからと、提供される飲料も控えめではあるが、申し出さえすれば、馬の休憩時に、支度室の利用もできたのだ。
ただ、外観から推測できる規模を考えると、休憩場の支度室は、小さなものだ。
利用者が自分たちだけではないことを考えると、やはり移動中の水分補給は考えなければならない。
そして、そんなところも、ケイマストラ王国内と比べれば、ミルフロト王国内の方が、整っているように思う。
さて、支度室を利用し終えると、待っていてくれた青少年と共に町を歩く。
今回は、男女混合の4人前後で動き、行きと帰りで、通る歩道を変えて、進んでいく組に遅れ過ぎないよう、あとを追う。
飲食店が多いのだと見えたが、どうやら、その内容は、ポトムと言う果菜を中心とした品が多いようだった。
プノム程度には保存期間の長い食物で、甘みが強めではあるが、食出はある。
プノムを主原料とした料理を、ポトムに代えても、甘みは強く出るものの、それを考えた味付けで工夫してあるので、調理の仕方は同じでも、味わいが違って、とてもおいしい。
レモンの町とも、調理方法については、話し合いが持たれており、それもあって、このように、主原料の違う同じ調理方法が見られるのだ。
馬車に戻って味わって、これはこれで、おいしいと、レモンの町の昼食時のプノムの味わいと、今のポトムと比べて、満足の頷きを交わす。
今日は、ちょっと食べ過ぎたかもと、少女たちは笑って、一部、悩む者もいた。
町歩きで親しめたので、今回の馬車内の顔触れは、男女混合だ。
貴人用馬車では、どちらも、賑やかな声が聞かれて、旅程3日目の陽は、温かな色へと空を変えた。
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