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寂れた6畳の部屋には、パソコンと真新しいタンスチェストが配置され、みるみるうちに部屋らしくなっていった。
そこで主である男性は仕事をしたりネットを見たりしながら、時々僕をチラリと見ては時間を確認した。
リビングには立派な電波時計が置かれていた。アナログ式の僕に比べると見栄えもいいし、何よりも時間がずれない。
みんなに会える時間が少なくなるのは悲しいけど、新しい役割を全うすることに、僕は専念した。それが、僕が僕であることだと思った。
男性が部屋からいなくなると、僕は1人になる。それでも時間は刻一刻と、歩みを止めることなく進んでいく。僕は真っ暗になった部屋の中で、その役目を忠実に果たしていた。
時には男性だけでなく、赤ちゃんも一緒に部屋に入って来た。もうハイハイをしたり、テーブルに掴まって立ち上がったり、自分で動けるようになったことが嬉しくて堪らない様子だ。
男性はパソコンに向いながらも、自分の息子に注意を払いながら仕事を進めていた。赤ちゃんは目に移るもの全てが珍しいらしく、何でも手に取っては口へと運んでいた。
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