ようこそ

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 お母さんのお腹はみるみる大きくなっていった。家事はおばあちゃんがほぼ全てをこなし、子守りは男性が引き受け、お母さんはソファーで休むことが多くなった。  子供を産むって大変なんだ。お兄ちゃんの時は、里帰り出産だったから知らなかったけど、今回はみんないるから。僕は近くでそれを見ていた。  お兄ちゃんになる子供にもそれが伝わるらしく、日に日に変化していくお母さんのお腹を触ってみたり、耳を当てて音を聞いたりしていた。  そうやってお兄ちゃんになるってことを、少しずつ理解していくのかもしれない。頑張ってね、小さなお兄ちゃん。  子供はお父さんとお風呂に入り、そして2階の寝室で一緒に寝た。お母さんがいることが分かっていれば、喚き散らすことはなかった。  えらいなぁ。なんか大変そうなのが、子供ながらに分かっているんだろうなぁ。  僕は感心しながらお兄ちゃんとお父さんの様子を見ていた。そして新しく生まれてくる赤ちゃんにエールを送った。  無事に生れて来てね。  僕も君を待ってるよ。  時を刻むこと約10カ月。お母さんの様子が一変した。お父さんは慌ててお母さんを車に乗せ、どこかへ連れていった。お兄ちゃんとおばあちゃんは留守番だ。  いよいよ生まれるのかもしれない。僕はドキドキしながら、1人家で静かに時を刻んだ。
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