ようこそ

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 お兄ちゃんは休まずに幼稚園に通い、弟くんはもりもりとお乳を飲み、すくすく育っていった。  弟くんが歩けるようになると、毎晩のようにお父さんと戦いごっこをした。2人はヒーローになりきり、お父さんに突っ込んでいく。お父さんは疲れた身体に鞭を打ちつつ、最後はいつも断末魔を上げ、やられてしまうのだった。  弟くんが走り回れるようになると、リビングは毎日運動会のような賑わいだった。僕のいる部屋からその光景は見えるけど、最近は扉が閉められ、真っ暗な部屋に取り残されることが多くなった。  お父さんはここに来て、パソコンで仕事をしつつ、時々は息子が描く絵を見たり、塗り絵をさせた。その時ばかりは僕も嬉しくて、ついつい秒針を早く進ませそうになった。  弟くんがお兄ちゃんと同じ幼稚園に通うようになる頃、再度引っ越しの話が聞こえてきた。お兄ちゃんが小学生に上がり、やがて弟くんも後に続く。そうなると、このお母さんの実家では狭く子供部屋もない。  そこでお父さんとお母さんは、一軒家を購入する一大決心をしたようだ。僕にとっては、2回目の引っ越しになる。次はどんなところに移るんだろう。
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