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人のいない部屋は殺風景だ。生きている感じがしない。
聞こえるのは、僕の秒針が進む音だけ。
とても静か。
時々おばあちゃんが縁側に出るため、ここを通りすぎるけど、僕のことなんかには目もくれない。僕を1度も見ることなく、用事が済むとまた扉を閉めて、すぐにリビングへと行ってしまう。
最初は叫んだ。
僕はまだ使える!ちゃんとしたところへ置いておくれよ!
僕は人の役に立ちたいんだ!みんなと一緒にいたいんだよ!
そんな叫びは届くはずもなく、僕は毎日、暗い部屋の中で時を進めた。
本当は分かっていた。
僕は置いていかれたんだって。
ただ認めたくなかった。
1人になりたくなかった。
新しい家には新しい時計が似合う。
僕は真っ白な時計だったけど、今では少し茶色くくすんでしまっている。
雑貨屋さんで買われてから、8年近くの時が過ぎていた。時計としては、もう十分働いたかもしれない。
もう僕はみんなと会えないのかな?
僕は会いたい気持ちを抱えながらも、その日から、叫ぶのをやめた。
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