さようなら

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 朝、太陽が昇っても、カーテンが閉められたこの部屋には、ほとんど光は入ってこない。  カーテンの隙間からわずかにこぼれる光から、朝が来たことが分かる。そして自分の時間が、さほど狂っていないことを確認する。  だけど、これが何になるのだろう。  朝が来て、陽が高く上り、西へと沈んでいく。この同じサイクルを、僕は何日も何百日も見てきた。  もう今日がいつで、外がどうなっているかも分からない。  子供達は大きくなっただろうな。もうお兄ちゃんは小学校へ通っているだろうな。弟くんは、幼稚園を卒園する頃かな?  僕はみんなで暮らしていた頃を思い出しながら、1人悲しくなった。それでも秒針を止めなかった。最後まで、自分の役目を果たしたかった。  それをやめてしまったら、僕は僕でなくなる。  しかし、その時は突然訪れた。  午前9時37分。  僕の秒針は、止まった。
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