白い時計

よろしくお願いします

「これリビングにいいんじゃない？」
　僕を手に取った女の人が言った。

「そうだね。ウチの壁紙に合いそう」
　それを隣で覗いていた男の人が、そう相槌を打った。

　僕は大事に抱えられ、そのままレジに運ばれた。会計が終わると、僕は買い物袋に入れられ、お店から離れた。

　僕を買ってくれた2人の男女は、その後、服や家具を見て、ショッピングモールを後にした。

　家に辿りつき、男性が僕を箱から出した。まだ真新しいアパートの一室。僕は電池を入れられ、時刻を合わせられた後、リビングの壁に掛けられた。

「これでよしっと」
　男性は誇らしげに僕を見上げて、次の作業に取り掛かった。

　ここが今日から僕が時を刻む場所。2人はどうやら新婚さんのようだ。子供はまだいない。20代後半と思われる若い夫婦との共同生活が始まった。