はじめまして

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はじめまして

 寒い冬を越し、辺りがぽかぽかと暖かくなった頃、女性が帰って来た。腕にはまだ首が座ったばかりの赤ちゃんが、大事そうに抱えられていた。  赤ちゃんは眠っていた。自分の胸の前で握りこぶしを握って。  ようこそ、赤ちゃん。はじめまして。  僕は初めて見る2人の赤ん坊をまじまじと見つめた。どうしてこんなに穏やかな気持ちになるのだろう。赤ちゃんは何もしないのに。  その後ろから、1人のおばあちゃんが続いていた。女性のお母さんらしい。  その日は4人で、買ってきた惣菜を並べて夕食をとった。  赤ちゃんが泣くと、女性がすぐに駆け寄りあやしていた。男性はその様子を覗めようと近づき、覗き込むように眺めた。  新しい生活が始まろうとしている。それでも僕はゆっくりと時を刻んでいた。
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