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入社式でのことを聞いてみようと思いつつ、砂原紗良に接触するチャンスはなかなか訪れない。
担当しているプロジェクトが繁忙期に入ったこともあり、秋山の興味も次第に薄れかけたある日、それは突然やってきた。
フロア内にある休憩エリアでばったり彼女に出くわしたのである。
ここにはドリンクの自販機のほかにちょっとしたサンドイッチや軽食が買える自販機も設置され、イートインスペースも用意されている、ちょっとした憩いのスペースとなっている。コンビニに行かずとも用が足せるので、小腹がすいた秋山はコーヒーとサンドイッチを買いにきたところだった。
飲みかけのペットボトルを手にして現れた砂原は秋山に気付くと軽く会釈をし、慣れない仕草でキョロキョロしながら冷蔵庫へたどり着いた。
彼女の一連の動作を何の気なしに眺めながら、秋山は思わず口を開いた。
「それ、目印つけた方がいいよ」
「え?」
肩をびくりとさせる砂原の反応を眺め、そんなに驚かなくてもと思いながら自分の言葉に補足する。
「そのお茶が自分のだってわかるように。他のヤツのと混在するだろ?」
そっか、と砂原が呟く。
「名前書くより、こういうストラップをつけとくといい」
秋山はたった今買ったコーヒーのおまけについてきたストラップを振って見せた。
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