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「あのーーすみません、じつは」
「え? 何?」
と、
「秋山ァ、うちの新人ナンパするとはいい度胸だな。しかもなんだその古くせぇ口説き文句は!」
「み、三元さん!」
出入口を塞ぐように仁王立ちになっているのは、砂原が配属されたチームの長、三元だった。「ナンパ――」と砂原が三元の言葉を反芻する。
「ち、ちがっ」
「砂原さん、こいつイケメンでしょ? この顔で軽薄に近寄ってくるから弄ばれないように気を付けてね。何人の女性がその気になってフラれて泣かされたんだろうね」
せっかく柔和だった砂原の顔が一瞬にして固くなる。三元がその後ろでタチの悪い顔で笑っていた。
「あのう、それって本当ですか?」
「ほ、本当って、どの部分――いや、どこもかしこも事実とちょっと違うし!」
思わず言い淀んだのにはわけがあった。
秋山の見た目につられて寄ってくる女性は多く、自分でいうのもなんだが一言でいえばモテる。
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