1.見つめる彼女

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 人当たりもいい方なので、あたかも優しい王子様のようだと勘違いされ告白されることも多々あり。だが社内恋愛はしないと決めている秋山がその想いに応えることはなく、結果的に泣かれるとも少なくなかった。  ついでにいえば、自慢じゃないが例え彼女になったって結局「あんたの見た目に騙された!」と去っていくパターンがほとんどで、秋山にしてみれば人のうわべだけで勝手に幻想を抱くな! と言いたい。そもそも普通のサラリーマンが王子様なはずがないわけで。  しかし、それをほぼ初対面の砂原になんといって説明すれば良いのか。というか、そこまで説明する義務が俺にあるのか? 秋山が混乱している間に、とっくに砂原の姿は消えていた。 「バカだな、お前。さっさと全部ウソだって否定すればいいのに」  しれっと三元が言う。しれっと。 「言うな! 三元さんがそれを言うな! つーか、ホント自重って言葉学んでくださいよ、あの子今すっげ冷たい顔してた――」  何やら勘違いをしたのか飛んできた課長が、頭を抱える秋山の手に1枚のプリントを握らせた。 「秋山くん、次回の社内講座、参加しようね」    秋山が握りしめたプリントから『第二十三回 社内講座 セクハラ!ダメ!絶対!』の文字が見え隠れしていた。
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