未知の惑星に行き着く学生

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駅から降りると、一面の平野だった。 地面に照明が点々と置かれ、足元を照らしている。 頭上は紺色に染まり、雲がまだら模様を作っている。星も月も見えない。 「きさらぎ駅ですらない……」 看板は掠れていて、まともに読めない。 線路はかろうじて残っているが、電車が来る気配はない。 頭に手を当て、記憶を遡る。 いつものように電車に乗って、ひさしぶりに席が空いていたから座った。 背もたれに寄りかかった瞬間、睡魔に襲われた。 両目を閉じた。そこから先の記憶がない。 ずっと電車に乗っていたのだろうが、降りた記憶もない。 まさか、寝ている間に駅員さんにつまみ出されたのだろうか。 何ということだろう。 「ここ、どこ……?」 左右を見渡すと、道路が広がっているのが見える。 それ以外は何も見えない。ただ呆然と立ち尽くしていた。 「君、そんなところで何してるんだ! 早くこちらへ!」 「え?」 「もうすぐ雨が降る! 急いで!」 手招きをされるまま、声の方へ走った。 扉を閉じた瞬間、雨音が響き渡った。 地面を強く打ち付けている。 「よかった。見つからなかったら、どうしようかと思いました」 男はほっと胸をなでおろした。 「すみません。ここ、どこですか? どこかホテルとか、泊まれるような場所はありませんか?」 「すぐに貴方を元の世界に戻します。泊まる必要もありません。 ただ、この場所に関してはお答えできません」 頑として首を横に振った。 「この実験で貴方が来られることを証明した。これで十分なのです」 先ほどから何の話をしているのだろうか。 この男が原因で俺はこの世界に来たというのだろうか。 「こんなことに巻き込んでしまって、本当にすみません。 ただ、こうでもしなければ私たちに明日はないんです」 よほど、切羽詰まっている状況にあるらしい。 電車を乗り過ごした自分を巻き込んでまで行うこととは何だろうか。 シャッターが開くと雨は止んでいた。 黄色のラインが入った電車がやって来た。 「さあ、それに乗って! 銀河の帰り道へ誘ってくれるでしょう!」 男の言葉もろくに聞かないまま、電車に飛び乗った。 空席にひとりで座っていると、意識は闇に落ちた。
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