耳鳴

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 それを横目に遙加は薫を尋問した。 「薫、どうして私の耳鳴りのこと知ってるの? 誰にも話していないのに」 「それより、さっきの耳鳴りの時かなり辛そうだったけど大丈夫かい」 「うん、大丈夫。もう、話を逸らさないで! でもどこかは分からないけどきっと大きな地震が来ると思う。何年か前に北海道や九州で大きな地震があったこと覚えてる?」 「あぁ、覚えているよ」 九条は遙加を優しくじっと見つめて話の続きを促した。 「……その前にも今みたいにひどい耳鳴りがあったの。こう、低音でボーっとかズーンて感じで。そんな時はその後に大きな地震が来るんだ」 「それだけじゃ無いよね」 遙加はどうして薫がそんなことを言うのか疑問に思ったが、話してみることにした。 「うん、高い電子音みたいな音で耳が痛くなるほどのキーンって時もあるよ。その時は地震じゃなくて地球のどこかでミサイルが撃ち込まれた時だった……。調べた訳じゃ無いけど、その後スマホを見たらネットニュースになってたから……」 「そうか、話してくれてありがとう。もう1人で抱え込まないでいいよ。どんなことでも俺に言って」 「うん! 久しぶりだね。薫が『俺』っていうの」 「あれ、今俺って言ってた? ちょっと昔を思い出していたからかな」 「昔? 何を思い出してたの」 興味津々な遙加の顔を見た薫は苦笑した。 「遥加は覚えていないと思うけど、小さい頃に東日本大震災があったのは知ってるよね」 「うん、何となくだけど覚えてる。外にいたら地面が海の波みたいに揺れてたのだけはよく覚えてる」 「その日、実は地震が起きる前にちょっと用事があって父と一緒に遙加の家に行ってたんだ。その時いつも元気な遙加が妙に元気がないから心配で聞いてみたら 『お耳が痛い』って言ってね。遙加はまだ小さい子どもだったから怖がらないようにどんな感じがするのか聞いてみたら耳鳴りだって分かった。 そのことは近くにいた父にだけ伝えて様子を見ることにしたんだけどね。その後少ししたらあの大きな地震が起きたんだ」 「薫、それ本当の話? 盛ってない?」 「私がそんなことする訳ないだろう」 「だから薫は私の耳鳴りのこと知ってたの?」 「まあそう言うことになるかな」 「よかった、薫がエスパーじゃなくて。もしかして私の耳鳴りのこと、うちの家族も知ってるのかな」 「いや、私とうちの父親しか知らないはずだよ」 家族に心配をかけたくない遙加はほっと胸を撫で下ろした。
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