島のシャーマン1

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島のシャーマン1

 その日遙は珍しく1人学内食堂で少し遅めの昼食を取っていた。 痩せの大食いを地でいく遙加は脇目も振らずにハンバーグ定食を食べていた。全てを平らげ満足してふと横を見ると見知らぬ男性が座っていた。どうやら学生ではないようだ。 好奇心に勝てない遙加はその男性の食べているものをこっそりと覗き見た。よく見るとそれはまだ遙加が食べたことのないバター豆腐定食だった。遙加は自然とその男性に声をかけていた。 「あのー、それってバター豆腐定食ですよね。とっても美味しそうに召し上がってますけどそんなに美味しいんですか?」 食べ物のことになると何故か追及したくなる遙加は見ず知らずの男性のランチタイムを中断させてしまった。 「ええ、とっても美味しですよ。ぜひ今度食べてください」 にっこり笑顔で答えた男性はまた目の前にある定食を食べ始めた。 程なくして食べ終わった男性は遙加の方を向いて真剣な目をして頷いた。 「私は田中聖修(たなかせいしゅう)と申します。今日はあなたに会うためにここに来ました。九条薫さんの知人で決して怪しいものではありません。よろしければこの後少しお時間をいただけないでしょうか」 遙加は少し考えた。怪しい者ではないという人間ほど怪しい。それに加えて今日はこの後の授業はどう言う訳か休講になっていた。単なる偶然とは思えない。しかしこの自称田中という人と2人っきりになるのは絶対薫に怒られてしまう。 「田中さん、お時間をいただけないかとは率直にどういうことでしょうか」 「はい、突然で申し訳ありません。できれば私の仕事場に来ていただきたいのですが如何でしょうか」 遙加は再度考えた。やはりそんな所に行ったことがバレたら必ず薫に怒られるだけでは済まない。だったら今の自分に出来ることはこれだけだ。 「あの、田中さんの職場に伺うことは出来ませんが、違う場所でだったらこの後ご一緒できますがそれでもよろしいですか?」 自称田中は一瞬少しがっかりした顔をしたが気を取り直したようだった。 「違う場所とはどちらでしょうか?」 「あなたの知人でもある九条薫とこれから会う約束をしているのでそこでよろしければご案内しますが……どうですか?」 田中は少しも考えることなく即答した。
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