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「ごめん遙加。彼に会えたのが嬉しくて、つい先走ってしまったよ。説明は彼にしてもらうから」
遙加はゆっくりと頷いた。
「遙加さん申し訳ありませんでした。私も久し振りに九条さんに会えたので嬉しい気持ちを抑えられなくて……。お恥ずかしい限りです」
田中は照れたように頭を掻いて九条の方を見た。そしてまた直ぐに遙加へと向き直った。
「今日お願いしたいことは2つです。
1つ目は何もせずただ椅子に座って目を閉じていただければ大丈夫です。
2つ目はこちらの紙をテーブルに置きますのでこの鉛筆を持って書く体勢を取って下さい。
注意点は1つだけ。何も考えず無心になって下さい。ではまず1つ目から始めますので一度立って下さい」
遙加は素直に立ち上がった。
すると田中は遙加の座っていた椅子をテーブルから少し離れたところへ移動した。
「では遙加さん、こちらへ座って目を閉じて下さい」
遙加が座るのを確認した田中は1m程の距離を空けて彼女の前に立って手をかざした。暫くするとかざした手を下ろし、遙加に声をかけた。
「では目を開けて下さい。何か感じたことがあったら教えて下さい」
遙加は目をパチクリと瞬かせてから田中の質問に答えた。
「目を瞑って少ししてからドーナツ型の丸い光の輪が頭の上から足元まで降りて行きました。黄金色の綺麗な光でした。温かくて優しい感じがした気がします。こんな感じでいいですか?」
「充分です。ありがとうございます。遙加さんはそれが何だか分かりますか?」
「うーん……悪い物では無いと思うんですが、それ以上はわかりません」
「九条さん、彼女に今起きたことを話しても大丈夫ですか?」
「全く問題ないよ」
2人が薫を見ると優しく微笑んでいた。田中はこんなに優しく微笑む九条薫を初めて見た。やはり九条にとって遙加はとても大切な存在のようだ。
「まず、光の輪はあなたを守る存在があなたに見せたものです」
「私を守るものですか?」
「はい、そうです。温かくて優しい感じがしても、懐かしい感じはしなかったでしょう?」
「どうして分かるんですか。以前私の守護霊は何代か前の母方のおばあさんだと聞いたんですが、その感じとはちょっと違うような感じがしました」
「さすが遙加さんですね。実は貴方を守る存在はたった今、交代したんですよ。これまでは貴方が仰るように母方のお婆様が守っておられました。
しかしもうお婆様では守りきれなくなったので安全なこの場所で交代しました。雅観音菩薩様に」
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