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海岡高等学校に通う九条遙加が霊媒体質だと気づいたのは、穏やかな日常の中何の前触れもなく突如として現れたこんな出来事からだった。
その日は5月中旬だというのにまるで梅雨入り前のような重苦しい空の色をしていた。
確か天気予報では雨は降らないと言っていたはずなのに何とも怪しい空模様だった。
「みんな早く帰る準備してー。少しでも遅くなったら次練習させてもらえなくなるからねー」
部長の言葉に軽音楽部のバンドのメンバー達は焦って帰り支度を始めた。
週に2回。これは顧問の先生と部長が必死に掛け合って学校側から許可された貴重な練習日。頭の硬い生活指導の先生の思い込みで軽音楽部は素行が悪いと決めつけられている。
ロックをやるのは不良だなんて一体いつの時代の人間なのだろうか。
理解に苦しむ。
現在高校2年生の九条遙加は軽音楽部のバンドメンバーに誘われて知り合いのバンドでリードボーカルをしていた。いつもは楽器屋さんのスタジオを借りて練習しているけれど、今日は学校に置いてあるアンプから気持ちよく大きな音を出しても文句を言われない貴重な日だ。
貴重な学校での音出し練習も終わったので、部長に言われる前からスタジオ代を稼ぐためのバイトに行こうと荷物をまとめ終わった九条は徐に立ち上がった。
そう、何の気無しに立ち上がっその時に異変が起きたのだ。
突如として視聴覚室の中に現れた透き通った青い光が部屋の外に向かって一直線に出て行った。それはまるでレーザービームのように。
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