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しかし、単なる視聴覚室にレーザービームを出せるような機材があるわけがない。それに加えてただでさえ一部の先生達に煙たがられている軽音楽部にそんな予算が下りるわけもない。
その一部の先生からはアンプから出てくる音がうるさいと眉間に皺を寄せて見下すように言われるがトランペットやサックスの音だって決して負けていないと軽音楽部の連中は思っている。
しかしコンクール上位入賞常連校のブラスバンド部と嫌われ者の軽音楽部では先生の態度があからさまに違いすぎた。同じ生徒なのに。
それに加えてバンドとしての完成度の低い、簡単に言えば演奏が下手な先輩は上手い後輩のことを『生意気だ』と言ったりする。
生意気だのなんだのいう前に上手くなればいいだけの話なのだが、そう言う奴らは努力するのは好きではないようだ。
話が横道に逸れてしまったので元に戻そう。
視聴覚室の中で突如発生した青い光は九条遙加の頭上を通り、そのまま扉や壁をもすり抜けてスーッと外へ出ていった。ご丁寧にわざわざ視聴覚室の出入り口の扉をすり抜けて。
それを見ていたのは3人の生徒だけ。しかも九条以外の二人は霊感があると自覚のある者だった。
一方九条はというと、
『18歳までに霊に関する体験をしなければ、霊感に目覚めることはない』
と言う言葉を闇雲に信じていた。彼女は自分には霊感なんてものはなくて、全く違う世界の関係のないことだと思っていた。
霊感なんてないはずなのに、彼女は青い光を見てしまったのだ。まあ、ないと思っていたのは本人だけなのだが……。
一緒に光を見ていた霊感のある二人は青い光について何やら話し出した。
「あれは、霊だね」
「そうだね、間違い無いだろうね」
二人は軽音楽部の他のバンドのギターリストとキーボード奏者だった。
ギターリストの岩館秋彦は青い光が九条の近くを通ったのを見ていた。
「あの青い光、九条の近くを通ってたけどお前は見えたか」
「うん、残念ながら見えたよ。あれって何だったの?」
「多分、ここから出て行った不幽霊じゃないかな、何かに惹かれてきてたけど用が済んだから帰ったんじゃないかな、多分」
「何でそんなこと分かるのよ」
「いや、分かるというより何となくそんな感じがするだけ、かな」
「ふーん……」
その日この話は一旦そこで終わり、皆それぞれアルバイト先へと急いだ。
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