◇01. 推し作家がいるわたしの幸せ。【本編】

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 あーあーあーあー井原さんまじ最高。きっと細田(ほそだ)光先生って、井原さんみたいなかたなんだろうなぁ……。  とまで思ったときにわたしはふと気づいた。――井原さんって。  気になったのでウーロンハイを作り続ける手を止めて一旦加波に断りを入れ、井原さんに話を聞きに行ってみる。「……井原さん。お疲れ様です。ありがとうございました」  勿論彼女に差し出すのはウーロン茶である。悪阻が辛いのか、井原さんは痩せたように思える。「七宮(ななみや)さんにもお世話になりました。急に抜けてごめんね?」 「いえ、そんな……」わたしは顔の前で手を振る。「ところで……井原さんって北陸の出身でしたっけ? 確か雪がすごいとか……」 「ああ、そうそう。二階建ての二階部分まで雪が積もって二階から外に出られるの」わたしの真意を知らず無邪気に井原さんは微笑む。「そうなのよねーいまの時期は雪が半端ないわ。雪下ろしも大変だし……」  ぴん、と来るものがあった。もしかして……もしかしなくても、井原さんは……。 「……井原さん」意を決してわたしは口にする。「ピザ、ピザ、ピザ、……って十回言ってみてください」
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