◇01. 推し作家がいるわたしの幸せ。【本編】

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「あらありがとう」わたしの意図を知らずでか、涙ぐんで見える井原さん。「そうね……七宮さんはよく懐いてくれるわんこみたいな後輩だったわ……本当にお世話になりました。また是非連絡とか、頂戴ね」  他に井原さんと喋りたいひとはたくさんいるはずなので、わたしは挨拶もそこそこに井原さんの傍から離れ、再び、部屋の隅でウーロンハイを作り続けるただの女となる。あぁあ……こういうとき、女の子少ないって不便だなぁ……男にお酌されるよりも女にされたほうが嬉しいみたいだし……男って……。  ふとあいつの顔を思い返す。――男って勝手……。  ふん、と鼻息を荒くしてぐいーっと酒を煽る。隣で加波が、豪快に行くねえ、と突っ込むがもういいそれでいい。  わたしなんてどうなっちゃったっていいんです光先生さえお元気でいてくれれば。  どん、と叩くようにグラスを置き、なみなみとボトルの焼酎を注ぎ、随分濃い目のウーロンハイを作ってやる。  女って役割、めんどくせ。たまには我を忘れて飲みたい夜だってあるのだわたしにだって。畜生。 『――おまえみたいなキモヲタ、誰も相手にしねえよ』
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