◇01. 推し作家がいるわたしの幸せ。【本編】

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『――今日の仕事は集中出来ていなかったな。どうした?』 『かっ……課長には関係ありませんっ』 『――いいや。おおありだ』  そして課長は下田くんの顎をそっと掴むと、顔を寄せ、 『――おまえが辛いとあいつが悲しむ』 「いっ……やぁあああ!!!」何度も読んでは絶叫する。たまらん。「くあーっ課長、倫子(りんこ)ちゃん溺愛していると見せかけてまさかの下×課とか! 嘘でしょうっ!? あぁーんもうここの描写がたまらんっ!! BLなんか興味なかったはずなのにぃー課攻めで下受けがたまらんっ!! うぁああー--!!!」  ここまで来ると自分がアブノーマルだという自覚はある。大丈夫。 「あぁあーー、なんっ……でこんな素敵なお話が書けるんだろう……小説家ってすごいなぁ……」  ぬくぬくおこたでぬくまり、スマホをタップしながら片手でみかんを剥こう……としたが無理ゲーでした。おとなしく両手で剥く。……そういや、元彼氏。 「みかんはヘタのほうから剥くといいって……言っていたなぁ」  別れたひとの財産って結局そのひとのこころのなかに残っているのだと思う。こんなかたちで。
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