◇01. 推し作家がいるわたしの幸せ。【本編】

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 確かに。みかんはヘタのほうから剥くと、白い襞襞が結構綺麗に取れて気持ちがいい。それにしてもわたし、何個入りのみかん買ったっけ? ひーふーみーよー、……八個入りかよ。食えるかな。いや食うだろう。食うしかねえよ。以上三段活用。 「……倫ちゃんと課長……うまくいくといいなぁ……」  小説の登場人物にこんなにも惹かれるのは、光先生の小説が初めてである。まるで、実在する人物のように、目の前で生き生きと動くのだ。こんな感覚を教えてくれた光先生にはこころから感謝している。先生は、執筆歴五年くらいで、一旦書かなかった時期もあったらしいが……読み専としては、作者が筆を折るのが最も悲しい。心無い言葉に先生が痛めつけられていないことを願うばかりである。大丈夫。そうしてわたしは今日もスターを押す。  * * * 「馬鹿野郎。最近の若いもんは、電話の取次ぎも出来ねえのか。昨日言ったばかりだろう。鈴木さんはK社に二名いるんだ。K社の鈴木と聞いたら下の名を聞け。次間違えたらシバくぞ」 「……真島さん。申し訳ありませんでした……」  ――あああー。今日も真島ックス節炸裂。めんどくせー。
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