雪の別荘殺人事件

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 そこには何十畳かわからないくらいの広い和室があった。  奥はキッチンスペースになっているようで、立派な食器棚も見えた。そして真ん中には見たこともないような大きな炬燵があった。どうやら掘り炬燵のようだ。  老婆がひとり、その端っこに入って座っていた。 「いらっしゃいまし…」  声はしゃがれているが、その佇まいは昔ながらの上品さを感じさせた。  僕はてっきり本郷という人は一人暮らしだと思い込んでいたので、ちょっと異様な光景に思えた。 「あの、僕たちは、その、本郷さんからお手紙を頂きまして…」 「山下耕一郎です」  山下が横から割り込んでくる。 「本郷君から心配事があるので来てくれないかと」 「聞いております。申し遅れました。私、道明寺よしのと申します。青児とは遠い親戚に当たります」  祖母でも叔母でもない、遠い親戚という言い方が妙に冷たく思えた。 「本郷君に会いたいのですが、今どちらに」 「それが…今日は見ておりません。昨日の夜、自分の食べ物を持って離れにある青児の部屋に行ったようです。なので今もそこにいるのかと…」 「そうですか…そちらへ行かせていただいてよろしいでしょうか」 「ええ、どうぞ。申し訳ありませんが、私、この歳でなかなか動けませんもので、ご案内できません。廊下をまっすぐ行って突き当たり、離れがございます。渡るときに履いていただく草履も置いてあります。あと、この隣にご来客様用に一部屋ご用意しております。どうぞお使いくださいまし」 「ありがとうございます」  とりあえず僕たちは用意された部屋へ行った。
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