運命の選択

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部屋に帰り、風呂を沸かしながらおそるおそるイーネットジャパンを検索すると、なんとここはオンライン予約が出来、今週の土曜にもう相談に行けるそうだ。 こんな簡単に相談できることに面食らった。料亭の和室で着物を着て仲人立会の元お見合いをするイメージだったのが、一気に最新の情報に更新された。 その週の土曜日の午後、新宿にあるビルの五階にイーネットジャパンはあった。 ガラス張りの綺麗な作りでカフェとかエステとかそういう自分に関係のなさそうな雰囲気を醸し出している。 中には何人もの人が忙しそうに働いているし、オープンテラスのような所で楽しそうに談笑している人もいる。 どういう仕組みで運営されているのだろうか。 不安が頭をよぎり、逃げ出したかったが、思い切って足を踏み入れた。 「神田さんですね、お待ちしていました。私本日担当になります岩田です」 感じの良さそうな一人の女性が出迎えてくれた。おそらく母と同じぐらいの年齢なのだろうか。 その女性に奥の方にある個室に通された。 観葉植物と机と椅子しかないこざっぱりとした部屋だ。カウンセリングルームと書いてあったので、こういう類の相談する時に使用する部屋なのだろう。 岩田さんがカラフルなパンフレットを取り出し、色々とシステムを説明し出した。彼女が昔でいう仲人的な立ち位置で色々と世話を焼いてくれるそうだ。 「早速ですがどんな女性と結婚したいかイメージはありますか?」 具体的な事を何一つ考えていなかったのですぐには答えられない。結婚したくて結婚相談所に来たのにおかしな話だ。 とにかく合コンとかで出会った肉食の女性ではない。それだけははっきりしている。 「……控えめで、優しくて、家事ができて」 岩田さんは優しく頷きながらメモを取っている。こんな漠然としたイメージでいいのだろうか。そして自分の出す条件もここで限界だった。 これ以上、思いつかない。 そこで言葉が詰まった自分に岩田さんは慣れた風に助け舟を出してくれた。 「それでは、外見はどうですか?」 「外見は……黒髪で長髪で……とにかく控えめな人」 この女っ気のない自分の横にいておかしくない人はそういうタイプなのだろう。何もかも控えめでなくては隣に居られて落ち着かない。 「岩田さん、安心してください。一流企業に勤めてらっしゃって、身長も175センチあるし、家柄もしっかりしてらっしゃる。ここでは人気男性ですよ」 岩田さんは不安に陥ってることを察し、俺に自信を取り戻させてくれた。彼女は凄腕の婚活カウンセラーなんだらう。 岩田さんをしっかりと見据えた。 「岩田さん、とにかく仕事のために結婚したいんです。一刻も早く海外勤務になりたいんです。よろしくお願いします」 深々と頭を下げたが、岩田さんは動じることなく仕事をこなそうと手を走らせた。 「あっ、海外帯同も条件なんですね……そしてできるだけ早く結婚したいと。わかりました。ちょっとお待ち下さいね。今花嫁候補を探して来ましょう」 岩田さんはブースに俺一人を残したままどこかへ行ってしまった。 本当にこんな短時間で結婚候補を探してくるのだろうか。
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