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冷たい夜風にさらされる。“感覚”はあるが、それだけだ。もうとうに、現の人間からは外れてしまっているからこの身が危なくなる事はない。 少女も少年も、そうなってしまった。 「だってそうでしょう……? “終焉の鳥”と忌み嫌われ生き死して尚、終焉の鳥のまま舞台を降りられないなんて、そんなのつらいです……」 昔誰かが、何度も謝っていたような気がする。記憶は泡沫で、すぐ忘れてしまうが。 罪人を裁き、死者を月葬し、死しても彷徨う死者を導く。だから“終焉の鳥”。満月の夜にしか力はふるえず、夜だけしか世界を巡る事はできない。 少女がふと空を見上げると感嘆の声を上げる。月から落ちてくる金色の光の粒は、丘の上にある墓石に降り注ぐ――それはこの世の物とは思えない不思議な光景だった。
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