恋色コンフィチュール

　那央也に告白されたあの日を境に、俺たちは友達から始めることにした。
　新幹線で二時間程かかる地方に転勤になった那央也からは、遠距離をものともせずに、大好きアピールを加えたメールが必ず毎日届く。
　日常のたわいもない内容や、昼飯の写真。スイーツ巡りが趣味なだけあって、和洋菓子が写真付きで送られてくることもある。
　最初は若干引いていたけど、三ヶ月も経てば、次第にそれらは俺の日常に馴染んでいった。

　今日も帰宅後に自宅のソファでビールを飲んでいると、那央也からメールが届いた。
　昼に食べたパンケーキの写真と、ハートマークがたくさん付いたそれを食べた感想。女子顔負けのキラキラ感が漂う。
　そんな女子力高いメールに「よかったな」と、一言返信をしてスマホをテーブルに戻す。

「俺は親か」

　五つ年上だからか、最近は友達というか親のような感覚が強い。那央也が俺に一生懸命になればなるほど、その気持ちが強くなる。
　那央也にとって俺は友達だけど好きな人だ。

（けど、俺にとって那央也は……）

「友達……までのレベルに到達してるのか、怪しいよな」

　肩書きに囚われるつもりはないけど、俺にとって那央也をどこに位置付けたらいいか分からない。
　男が男を好きになるって、どういうきっかけなのか。そもそも、男女の恋愛もそれほど真剣にしてこなかった俺には、未知の世界だ。

（何故、俺を好きになったのだろう）

　ふと浮かんだ疑問。
　あの日、連絡先を交換してバタバタと別れてしまったから、理由は知らないままだ。

「週末、会いに行ってみるか」

　那央也が転勤してから、一度も会わずに三ヶ月以上経ってる。メールとたまに電話をして世間話をするくらいで、長い時間話したことはない。だから、いい機会かもしれない。

　そうと決まったら連絡……と思ってスマホに手を伸ばしかけ、途中で止めた。

（何も言わずに会いに行って、驚かせてやろう）

　思い直した俺は、那央也には知らせずに会いに行くことを決めた。

　＊＊